
取締役会議事録の作成方法を法的要件から実務のポイントまで徹底解説。会社法が定める必須記載事項、作成フロー、署名・押印・保管のルール、テンプレート例、AI議事録ツールの活用法まで、取締役会議事録の全知識をまとめました。
取締役会議事録とは?——法的義務と実務上の重要性
取締役会議事録は、会社法第369条第3項により作成が法的に義務づけられている公式文書です。通常の会議議事録と異なり、記載すべき事項や保存期間が法律で厳密に定められており、不備があれば過料の制裁を受ける可能性もあります。
しかし実務の現場では、「法律の要件がわからない」「テンプレートをそのまま使っているが正しいのか不安」という声が少なくありません。特に中小企業では、総務担当者が一人で取締役会議事録を作成しているケースも多く、属人化のリスクが高い領域です。
この記事では、取締役会議事録の法的要件・必須記載事項・作成フロー・実務上の注意点を体系的に解説し、ミスなく効率的に作成するためのポイントをお伝えします。
会社法が定める取締役会議事録の要件
作成義務の根拠
会社法第369条第3項は、取締役会の議事について法務省令で定めるところにより議事録を作成しなければならないと規定しています。この「法務省令」とは会社法施行規則第101条を指し、具体的な記載事項が列挙されています。
議事録の作成義務は取締役会設置会社に課されるものであり、取締役会を設置していない会社には適用されません。ただし、取締役会非設置会社でも取締役の決定を記録する書面の作成は実務上推奨されています。
保存期間と閲覧請求権
取締役会議事録は取締役会の日から10年間、本店に備え置く必要があります(会社法第371条第1項)。株主は、権利行使のために必要があるときは、裁判所の許可を得て議事録の閲覧・謄写を請求できます。
債権者も、取締役の責任を追及するために必要があるときは同様の請求が可能です。このため、議事録の内容は将来の訴訟リスクも考慮して慎重に記載する必要があります。
電子的記録の可否
会社法施行規則第101条第2項により、議事録は電磁的記録で作成することも可能です。この場合、電子署名を用いることで書面への署名・記名押印に代えることができます。ペーパーレス化を進める企業にとって、電子化は大きな選択肢です。
取締役会議事録の必須記載事項
会社法施行規則第101条第3項に基づき、以下の事項を記載する必要があります。漏れがあると法的に不完全な議事録となるため、チェックリストとして活用してください。
①開催日時・場所
取締役会が開催された日時と場所を記載します。テレビ会議やWeb会議で開催した場合は、その旨と各出席者の所在場所を記載します。「東京本社会議室およびWeb会議システムにより開催」のような記載が一般的です。
②出席者
取締役会に出席した取締役・監査役の氏名を記載します。特に、議決権を有する取締役の出席数が定足数(過半数)を満たしていることが確認できるよう、出席者数と総数も明記するのがベストです。
テレビ会議で出席した取締役がいる場合は、「テレビ会議システムにより出席」と付記します。
③議事の経過の要領とその結果
各議案について、提案の内容・審議の経過・決議の結果を記載します。ここが議事録の核心部分です。議案ごとに「第1号議案」「第2号議案」と番号を振り、それぞれについて記録します。
決議結果は「全員一致で承認可決した」「賛成○名、反対○名で可決した」など、賛否の状況がわかる形で記載します。特に反対意見があった場合は、誰がどのような理由で反対したかを記録することが、善管注意義務の観点から重要です。
④特別の利害関係を有する取締役
議案について特別の利害関係を有する取締役がいる場合、その氏名を記載します(会社法第369条第2項)。利害関係のある取締役は議決に加わることができないため、その旨を明記し、定足数・決議要件の計算から除外されていることを示す必要があります。
⑤議長の氏名
取締役会の議長を務めた者の氏名を記載します。定款で議長を定めている場合はその取締役が、定めていない場合は互選で選出された者が議長となります。
⑥報告事項
決議事項だけでなく、取締役会への報告事項も記載します。代表取締役の業務執行報告(会社法第363条第2項)、監査役の報告など、法定の報告事項は必ず記録してください。
取締役会議事録の作成フロー
ステップ1:事前準備
取締役会の招集通知と議案資料を事前に入手し、議事録のテンプレートに議案名・議案番号を記入しておきます。議案の内容を事前に理解しておくことで、当日のメモ取りの精度が格段に上がります。
ステップ2:当日のメモ取り
取締役会中は、各議案の審議内容と決議結果を正確にメモします。特に重要なのは、賛否の人数、反対意見の内容、条件付き承認の条件です。ICレコーダーやAI議事録ツールで録音しておくと、聞き漏らしのリスクを軽減できます。
ステップ3:ドラフト作成
取締役会終了後、できるだけ早くドラフトを作成します。理想は当日中、遅くとも翌営業日中です。時間が経つほど記憶が薄れ、正確性が低下します。テンプレートに沿って必須記載事項を漏れなく記入しましょう。
ステップ4:確認・修正
作成したドラフトを議長または代表取締役に確認してもらいます。法的に重要な文書であるため、事実関係の誤りがないか、表現が適切かを複数の目でチェックすることが不可欠です。
ステップ5:署名・押印・保管
確認が完了したら、出席した取締役・監査役が署名(記名押印)します。定款で署名義務者を限定している場合は、その定めに従います。完成した議事録は本店に10年間保存します。
実務で差がつく5つのポイント
①「経過の要領」の詳しさの匙加減
議事の経過は「要領」で足りるとされており、逐語録である必要はありません。しかし、あまりに簡略すぎると善管注意義務の履行を証明できません。目安として、「どのような論点が出て、どのような判断がされたか」が第三者にも伝わるレベルで記載しましょう。
②反対意見の記録は取締役を守る
取締役会の決議に参加した取締役は、議事録に異議をとどめない限り、決議に賛成したものと推定されます(会社法第369条第5項)。反対した取締役の責任を適切に切り分けるためにも、反対意見は正確に記録する必要があります。
③書面決議(みなし決議)の議事録
会社法第370条に基づく書面決議(みなし取締役会決議)を行った場合も、議事録の作成が必要です。この場合、「取締役会の決議があったものとみなされた事項の内容」「提案者」「議事録作成日」などを記載します。実際に会議を開催していないため、「議事の経過」は不要です。
④テレビ会議開催時の注意点
テレビ会議で取締役会を開催する場合、出席者が一堂に会するのと同等の相互コミュニケーションが確保されていることが要件です。議事録には、使用したシステム名、通信状況に問題がなかった旨を記載しておくと安全です。
⑤AI議事録ツールの活用
最近では、AI議事録ツールを取締役会の記録に活用する企業も増えています。録音データからの自動文字起こし・要約生成により、ドラフト作成の時間を大幅に短縮できます。ただし、AI生成のドラフトはあくまで叩き台であり、法的要件を満たしているかの人的チェックは必須です。
まかせる議事録のようなAI議事録ツールを使えば、取締役会の音声から自動で議事録ドラフトを生成し、法定記載事項のチェックリストと照合することで、漏れのない議事録作成を支援できます。
取締役会議事録のテンプレート例
以下は、実務で使える取締役会議事録のテンプレートです。自社の定款や実情に合わせてカスタマイズしてください。
基本構成
1. 表題:「第○回取締役会議事録」
2. 日時:○年○月○日(○)○時○分〜○時○分
3. 場所:本店会議室(Web会議併用の場合はその旨を記載)
4. 出席者:取締役○名中○名出席、監査役○名中○名出席
5. 議長:代表取締役○○(定款第○条に基づく)
6. 議案:第1号議案〜
7. 報告事項:業務執行報告等
8. 署名欄:出席取締役・監査役の署名押印
議案部分の記載例
「第1号議案 ○○の件」として、議長が議案の趣旨を説明し、審議の結果、出席取締役全員一致で原案どおり承認可決した旨を記載します。質疑があった場合は、主要な質問と回答の要旨を記録します。
よくあるミスと対策
定足数の確認漏れ
取締役の過半数が出席しなければ取締役会は成立しません。出席者数と定足数の充足を議事録冒頭で明記し、万が一不足している場合は決議が無効となることを認識しましょう。
特別利害関係取締役の見落とし
利益相反取引の承認など、特別の利害関係を有する取締役の特定を怠ると、決議自体の有効性が争われるリスクがあります。議案ごとに利害関係者がいないかを事前に確認する習慣をつけましょう。
署名・押印の遅延
議事録の作成後、署名・押印が何ヶ月も遅れるケースが実務では散見されます。取締役会後2週間以内に完了させることを社内ルールとし、期限管理を徹底しましょう。
過去の議事録との整合性不足
前回の取締役会で「次回報告」とされた事項が、次回の議事録に記載されていないケースがあります。前回議事録の確認事項を次回のアジェンダに組み込む運用が効果的です。
まとめ:法的義務を守りつつ効率的な議事録作成を
取締役会議事録は、法的義務であると同時に、企業のガバナンスを証明する重要な文書です。必須記載事項を漏れなく記載し、適切に保存・管理することで、法的リスクを回避しつつ、経営判断の透明性を担保できます。
作成の効率化には、テンプレートの整備、事前準備の徹底、そしてAI議事録ツールの活用が有効です。まかせる議事録を使えば、取締役会の録音から自動でドラフトを生成し、法定記載事項のチェックも効率化できます。法的品質と業務効率を両立する議事録作成を目指しましょう。
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