
取締役会議事録の作り方を法的要件から実務まで徹底解説。会社法が定める必須記載事項チェックリスト、5ステップの作成手順、テンプレート例、書面決議の注意点、AI議事録ツールの活用法まで、ミスなく効率的に作成するための完全ガイドです。
取締役会議事録が求められる理由
取締役会議事録は、会社法第369条第3項により作成が義務づけられた法定書類です。 取締役会で行われた審議・決議の内容を正確に記録し、経営判断の透明性と説明責任を確保する役割を担います。
議事録に不備があると、株主代表訴訟や行政指導の際に経営判断の正当性を証明できないリスクが生じます。 また、金融機関からの融資審査や上場準備においても、取締役会議事録の整備状況がチェックされるため、 中小企業であっても適切な作成体制を整えることが不可欠です。
本記事では、取締役会議事録の法的要件・必須記載事項・作成手順・保管ルール・効率化のポイントを 体系的に解説します。
会社法が定める法的要件
作成義務と根拠条文
会社法第369条第3項は、取締役会の議事について「法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない」と定めています。具体的な記載事項は会社法施行規則第101条に列挙されており、 この規則に沿って作成することが法的に求められます。
保存期間と閲覧請求
取締役会議事録は取締役会の日から10年間、本店に備え置かなければなりません(会社法第371条第1項)。 株主は権利行使に必要な場合、裁判所の許可を得て議事録の閲覧・謄写を請求できます。 債権者も取締役の責任追及のために同様の請求が可能です。
署名・記名押印の要件
取締役会に出席した取締役および監査役は、議事録に署名または記名押印する義務があります (会社法第369条第3項)。電磁的記録で作成する場合は、電子署名をもって代えることができます。
違反した場合のペナルティ
議事録を作成しなかった場合、取締役は100万円以下の過料に処される可能性があります (会社法第976条)。形式的な要件を満たしていない議事録も、法的に不完全と見なされるリスクがあります。
必須記載事項チェックリスト
会社法施行規則第101条に基づき、取締役会議事録に必ず記載すべき事項を整理します。 作成時のチェックリストとして活用してください。
① 開催日時・場所
取締役会が開催された日時と場所を正確に記載します。Web会議で開催した場合はその旨と各出席者の所在場所も記載が必要です。 「2026年3月1日 午前10時 東京本社会議室(一部取締役はWeb会議システムにより出席)」のように記載します。
② 出席者
出席した取締役・監査役の氏名を記載します。定足数(取締役の過半数の出席)を満たしていることが 議事録から読み取れるよう、総数と出席者数を明記するのがベストプラクティスです。
③ 議長
議長を務めた者の氏名を記載します。定款で代表取締役が議長を務めると定めている場合は、 その旨も記載すると丁寧です。
④ 議事の経過の要領と結果
これが議事録の最も重要な部分です。各議案について、 提案の内容、質疑応答の要旨、賛否の状況、決議の結果を記載します。 「全員異議なく承認可決した」「賛成○名、反対○名により可決した」のように明確に記載します。
⑤ 特別の利害関係を有する取締役
議案について特別の利害関係を有する取締役がいる場合は、 その氏名と議決に参加しなかった旨を記載します。利益相反取引の承認決議などで該当します。
⑥ 報告事項
決議事項だけでなく、取締役会への報告事項(業績報告、コンプライアンス報告など)も記載します。 特に、代表取締役の職務執行状況の報告は3か月に1回以上行う義務があります。
取締役会議事録の作成手順
ステップ1:事前準備
取締役会のアジェンダと議案資料を事前に入手し、 議事録のドラフトを作成しておきます。決議事項・報告事項の一覧、出席予定者リスト、 前回議事録の確認事項をテンプレートに埋めておくことで、当日の記録がスムーズになります。
ステップ2:会議中の記録
取締役会中は各議案の審議経過と決議結果をリアルタイムで記録します。 発言の一言一句を記録する必要はありませんが、 「誰がどのような意見を述べ、どのような結論に至ったか」を要約して記録します。 AI議事録ツールを補助的に使用する場合は、機密情報の取り扱いに注意してください。
ステップ3:ドラフト作成
会議終了後、速やかにドラフトを作成します。 記憶が新鮮なうちに作成することが正確性の確保に不可欠です。 理想的には会議翌営業日までにドラフトを完成させましょう。
ステップ4:レビュー・修正
ドラフトを議長および関係取締役に回覧し、事実関係の確認と修正を依頼します。 「議事の経過の要領」の表現は、法的リスクも考慮して慎重に確認します。
ステップ5:署名・保管
最終版に出席取締役・監査役の署名または記名押印を取得します。 電子署名を利用する場合は、クラウドサインやDocuSignなどの電子署名サービスを活用できます。 完成した議事録は本店に10年間保管します。
議事録テンプレート例
以下は取締役会議事録の基本テンプレートです。自社の定款や運用ルールに合わせてカスタマイズしてください。
- 表題:第○回取締役会議事録
- 開催日時:2026年○月○日 午前○時○分〜午前○時○分
- 開催場所:(所在地・会議室名)
- 取締役総数:○名 / 出席取締役:○名(氏名列記)
- 監査役総数:○名 / 出席監査役:○名(氏名列記)
- 議長:代表取締役 ○○○○
- 第1号議案:(議案名)→ 審議経過 → 決議結果
- 第2号議案:(議案名)→ 審議経過 → 決議結果
- 報告事項:(報告内容の要旨)
- 署名欄:出席取締役・監査役の署名
作成時の実務上の注意点
書面決議(みなし決議)の議事録
取締役会を実際に開催せず、書面決議(会社法第370条)を行った場合も議事録の作成が必要です。 この場合は「取締役会の決議があったものとみなされた事項の内容」「提案者」 「決議があったとみなされた日」「議事録作成者」を記載します。
反対意見の記録
取締役が議案に反対した場合は、その旨を議事録に明記することが重要です。 会社法第369条第5項により、議事録に異議をとどめなかった取締役は、 その決議に賛成したものと推定されます。反対取締役の責任を免除するためにも正確な記録が必要です。
機密情報の取り扱い
取締役会ではM&A、人事、訴訟対応など高度な機密事項が審議されます。 議事録の保管場所・アクセス権限を厳格に管理し、 クラウドストレージを利用する場合はアクセスログの記録も有効です。
AI議事録ツールで効率化するポイント
近年、AI議事録ツールを取締役会の記録に活用する企業が増えています。 ただし、法定要件を満たす最終的な議事録は人間が責任を持って確認・作成する必要があります。
- 録音・文字起こし:審議内容の記録漏れを防ぐ補助ツールとして有効
- 要約機能:議事の経過の要領をドラフトする際の下書きに活用
- セキュリティ:取締役会の内容は極秘情報のため、オンプレミス型やISO27001認証済みのツールを選定
- 電子署名連携:署名・記名押印のプロセスを電子化して完結させる
まとめ
取締役会議事録は、会社法により作成・保管が義務づけられた重要な法定書類です。 本記事のポイントを振り返ります。
- 法的要件:会社法第369条・施行規則第101条に基づき作成し、10年間保存する
- 必須記載事項:開催日時・場所、出席者、議長、議事の経過と結果、特別利害関係人を網羅する
- 作成手順:事前準備→会議中記録→ドラフト作成→レビュー→署名・保管の5ステップ
- 実務ポイント:書面決議、反対意見の記録、機密管理に注意する
- 効率化:AI議事録ツールを補助的に活用し、正確性と効率を両立させる
適切な議事録を作成することは、経営の透明性を高め、将来のリスクから会社を守ることにつながります。 本記事のチェックリストとテンプレートを活用し、自社の取締役会議事録の品質を見直してみてください。
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