契約書の基本構成から具体的な作成手順、よくあるミスまで、中小企業が自力で契約書を作成するための完全ガイドです。
契約書を自分で作成するのは難しそうに思えるかもしれませんが、基本的な構成と押さえるべきポイントを理解すれば、専門家に依頼しなくても実務に耐える契約書を作ることは可能です。
本記事では、契約書の基本構成から具体的な作成手順、よくあるミスまで、 中小企業の経営者・管理部門の方が自力で契約書を作成するための完全ガイドをお届けします。
1. 契約書の基本構成
契約書は大きく分けて以下の4つのパートで構成されます。
① 表題(タイトル)
「業務委託契約書」「売買契約書」など、契約の種類がわかるタイトルを付けます。 法的にはタイトルに拘束力はありませんが、契約の目的を明確にするために重要です。
② 前文
契約当事者(甲・乙)の定義と、契約を締結する目的を記載します。 例:「株式会社〇〇(以下「甲」という。)と△△株式会社(以下「乙」という。)は、以下のとおり業務委託契約を締結する。」
③ 本文(条項)
契約の具体的な内容を条項ごとに記載します。業務内容、報酬、期間、解除条件、損害賠償など、 取引に必要な事項をすべて盛り込みます。
④ 後文・署名欄
契約書の作成通数と保管方法を記載し、日付・当事者の署名(記名押印)欄を設けます。 例:「本契約の成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙各自記名押印の上、各1通を保有する。」
2. 作成前の準備
いきなり条文を書き始める前に、以下の準備を行うと効率的に進められます。
- 取引条件の整理:相手方と合意した(または合意予定の)取引条件をリストアップします。口頭での合意事項も含めて書き出しましょう
- リスクの洗い出し:「もし〇〇が起きたらどうするか」を想定し、トラブル時の対応方針を決めておきます
- テンプレートの入手:類似の契約書テンプレートを入手し、たたき台として活用します。経済産業省やIPAなど公的機関のものが信頼性が高くおすすめです
- 関連法令の確認:取引に関連する法律(下請法、個人情報保護法など)の要件を確認しておきます
3. 契約書を作成する5つのステップ
ステップ1:テンプレートを選ぶ
取引の種類に合ったテンプレートを選びます。業務委託、売買、秘密保持など、契約の種類ごとに適切なテンプレートを使いましょう。
ステップ2:取引条件を条文に落とし込む
準備段階で整理した取引条件を、テンプレートの各条項に反映していきます。曖昧な表現は避け、具体的な数字や期日を入れることがポイントです。
ステップ3:リスク対応条項を追加する
洗い出したリスクに対応する条項を追加します。損害賠償の上限、不可抗力条項、秘密保持義務など、 トラブル発生時の対応を定める条項は特に重要です。
ステップ4:全体の整合性を確認する
条項間で矛盾がないか、用語の定義が統一されているか、条文の番号が飛んでいないかなどを確認します。 特に、テンプレートから条項を削除した場合は、他の条項からの参照先がずれていないか注意しましょう。
ステップ5:相手方と交渉・合意する
作成した契約書ドラフトを相手方に提示し、修正要望があれば交渉します。 修正履歴を残しながら合意を形成し、最終版を確定させます。
4. 必ず入れるべき基本条項
契約の種類を問わず、以下の条項は必ず入れましょう。
- 契約期間:開始日と終了日、自動更新の有無
- 解除条件:どのような場合に契約を解除できるか
- 損害賠償:賠償範囲と上限額の定め
- 秘密保持:業務上の情報の取り扱い
- 反社会的勢力の排除:反社条項(現在ほぼ必須とされています)
- 合意管轄:紛争時にどこの裁判所で解決するか
- 協議事項:契約に定めのない事項の処理方法
5. よくある失敗と対処法
- 業務範囲が曖昧:「〇〇業務全般」ではなく、具体的な作業内容を列挙しましょう
- 支払条件があいまい:「納品後速やかに」ではなく「納品後30日以内に銀行振込にて支払う」のように具体化します
- 知的財産権の帰属を決めていない:定めがない場合、原則として著作権は制作者(受託者)に帰属します。発注者に譲渡する場合は明記が必要です
- 解除条件が片方にしかない:双方に対等な解除権を設けるのが基本です。合理的な理由なく一方だけに解除権がある場合、トラブルの元になります
- 印紙の貼り忘れ:契約の種類によっては収入印紙が必要です(印紙税法)。電子契約の場合は不要です
6. 形式面のルール
法律上、契約書の形式に厳密なルールはありませんが、実務上は以下のルールに従うのが一般的です。
- A4サイズ・縦書き or 横書き:ビジネス契約では横書きが主流です
- 条文番号:「第1条」「第2条」と通し番号を付けます
- ページ番号:複数ページの場合は必ず付与しましょう
- 契印(割印):複数ページにわたる場合、ページ間に契印を押すことで差し替え防止になります
- 収入印紙:課税文書に該当する場合は所定の金額の印紙を貼付し、消印します
7. 作成後のリスクチェック
契約書を作成したら、署名前に必ずリスクチェックを行いましょう。 自分で作成した契約書は、自身の視点に偏りがちです。第三者の目でチェックすることが理想ですが、 社内にリーガル担当がいない場合はAIによる契約リスク診断を活用するのも有効な手段です。
「契約リスク診断AI」では、契約書をアップロードするだけで、リスクの高い条項や抜け漏れの可能性がある条項を自動で指摘します。 契約書作成のセルフチェックツールとして、ぜひご活用ください。
💡 AIツールの出力例
※以下はイメージです。実際の企業データではありません。
業務委託契約書ドラフトのリスク診断結果
■ チェック項目数:23条項
■ 🔴 要修正(2件):第5条 知的財産権の帰属が不明確 / 第9条 損害賠償の上限未設定
■ 🟡 推奨修正(3件):反社条項なし / 不可抗力条項なし / 契約解除の予告期間が短い
■ 🟢 問題なし(18件):業務内容・報酬・支払条件・検収・秘密保持 等
■ 修正案の自動生成:「第9条の2 損害賠償の上限」の条文ドラフトを提案
参考資料・出典
- e-Gov法令検索 — 民法(第3編 債権)
- 経済産業省 — モデル契約書(AI・データ編)
- 情報処理推進機構(IPA) — 情報システム・モデル取引・契約書
- 中小企業庁 — 下請代金支払遅延等防止法の概要
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